【鉄人】(2014年7月号)


身長151センチ、体重42キロの〝鉄人〟をご存じだろうか。100メートル走の世界記録保持者、京都市在住の宮﨑秀吉さん。マスターズ陸上の男子100~104歳の部で出した29秒83は堂々の世界レコード▼明治43(1910)年生まれの103歳。ギネスも「世界最高齢競技者」に認定したスプリンターは、「ボルトと走るのが夢」と語る▼胸に「京都」と書かれた真っ赤なユニホーム姿。背中には3キロの砲丸が入ったリュックを背負う。自宅から500メートル先の公園で100メートルを1周走り、短い休憩の後は砲丸を数回投げる。朝7時半から約1時間のトレーニングを週2、3回は行っているというから脱帽だ▼イギリスの医学誌『ランセット』は「日本特集号」で、この国の長寿の秘密は国民皆保険制度にあると報告した。均質かつ充実した高いレベルの医療サービスを低コストで提供し、慢性疾患予防や健康増進などの分野でも成果をあげている、と▼この特集が組まれたのは2011年秋、国民皆保険制度が50周年を迎えたタイミングでのこと。つまりランセットが称賛したのは「それまで」の50年についてだ▼2020年、宮﨑さんは109歳。東京五輪と同時に高齢者の競技会が開かれないかと期待している。「これから」の保険制度は、鉄人をサポートしその夢を実現するものでありたい。