【どうもこうもならん】(2014年8月号)


上越地方に伝わるお話。昔むかしある村に、「ドウモ」どんと「コウモ」どんという、とても腕のいい2人の医者がいた。どちらも神業のような外科手術が自慢で、お互いに「われこそがナンバーワン」といって譲らない。そこで2人の名医は腕比べをして決着をつけることにした▼まずはドウモどんがコウモどんの腕を切り落とし、瞬く間に元通りに付け直す。すると今度はコウモどんがドウモどんの足を切り、これもあっという間に元通りにくっつける▼ともに縫合のあとすら残さないほどの凄腕で、なかなか勝負が決まらない。そこで2人は同時にお互いの首を切り落とし、相手の胴体に自分の首をすげ替えることにした▼双方、刀を握り締め「イチ、ニの、サン」の掛け声とともに……。「どうもこうもならん」というのは、ここから生まれた言葉だそうな(『日本の民話11越後・佐渡篇』収載「ドウモとコウモ」未来社刊)▼財政制度等審議会は、増え続ける社会保障費によって、国の財政が「どうもこうもならん」状況になっていると報告した。受診ごとに数百円、患者の窓口負担を増やすなど、社会保障制度の〝改革〟が必要だという▼「医療の充実」を名目として実施されたはずの消費税率引き上げだったが、早くも、それだけでは「どうもこうもならん」とは、なんとも無責任な言いぐさだ。