【恥ずかしい名称】(2014年6月号)


政府の有識者会議などを「賢人会議」と呼ぶ風潮が一時期あった。英語でフォーレターワードといえば、人前で口にするべきではない破廉恥な四文字単語のことだが、四文字の漢字からなるこれほど恥ずかしい名称を、ぬけぬけと最初に考えついたのはいったいどこの誰だったのか▼首相は私的な諮問機関が大好きなようだ。志を同じくする「賢人」たちからの御意見は、客観性や中立性とは無縁でさぞかし耳に心地よいことだろう▼国家戦略特区諮問会議が外国人労働者の受け入れ拡大を提言した。「外国人が安心して通院できる環境を整えるため、外国人医師でも日本で医療行為ができるようにする」「外国人の子どもが通うためのインターナショナルスクールを充実させる」「職住近接を実現するため容積率規制を緩和する」――。鳴り物入りで打ち出された「特区」構想の骨格が、外国人のための医師と学校と高層ビルを増やす、というのではあまりにもお粗末すぎる▼「最初の哲学者」といわれるタレスが活躍したのは紀元前6世紀ごろ。古代ギリシャの時代、賢者の中の賢者にだけ与えられる「杯」を贈られたタレスは、それを別の賢者に渡してしまう。ところが、杯はめぐり巡って、結局は彼の手に戻ってくる▼「タレスの杯」が、それにふさわしくない「賢人」の手にあるままでは、国が危うくなるばかりだ。