【24人に1人】(2015年10月号)


生命保険を契約するときや、年に1度の健康診断の際に、「祖父母や両親に心臓病や脳卒中、がんなどの病気になったひと、高血圧のひとはいませんか」などとよく聞かれる。はじめて利用する調剤薬局でも同じような内容の質問票を渡され、深く考えもせずにサラサラと記入してきた。だが、もし両親が誰だか分からないとしたら、どう答えたらいいのか▼この夏、国内の2組の夫婦の希望で、匿名の第三者の卵子と夫の精子を使った受精卵がつくられた。年内にも妻に移植される。生まれてきた子どもには「事実」を告知し、15歳になったときに本人が望めば卵子提供者の情報を開示するという▼日本では戦後間もないころから第三者の精子を使った非配偶者間人工授精が行われてきた。誕生したひとは1万人を超えるというが、匿名を条件に提供者となった「父親」を知るすべはない。「子どもが出自を知る権利」、そして「不妊で悩む夫婦が親になる権利」。法整備の必要性が常に指摘されている問題だ▼日本産科婦人科学会によると妻の卵子と夫の精子を使った体外受精の治療件数は、2013年だけで36万8764件。その結果4万2554人が誕生したという。いずれも過去最多で、じつに24人に1人が体外受精で生まれた計算だ。生殖医療・不妊治療のさらなる進歩が望まれる。