【ぎなた読み】(2015年11月号)


「弁慶が、なぎなたを持って」を「弁慶がな、ぎなたを持って」と誤読する「ぎなた読み」。ただの点だと侮ってはいけない。「、」(読点)は使う場所を間違えるとたいへんなことになる▼「たびやくしや(旅役者)足袋屋櫛屋と読みもよみ」という古川柳もあるそうだが、日常生活でなにげなく口にしている会話にも、文字にすると違う意味にとれる「ぎなた読み」がたくさんある▼「ぱんつくった(パン作った/パンツ食った)」「くるまでまつ(クルマで待つ/来るまで待つ)」「ねえちゃんとふろはいった(ねえ、ちゃんと風呂入った/姉ちゃんと風呂入った)」「きょうふのみそしる(今日、麩のみそ汁/恐怖のみそ汁)」などなど。クリニックの待合室に「ここではきものをぬいでください」と書いてあったら、履物ではなく着物を脱いでしまうかも▼樹木希林さんは「弥勒」という役名で「見ろ、クマだ、かわいい」というセリフを「ミロク、まだ、かわいい」と演じて大ウケ。近松門左衛門は数珠屋に「ふたえにまげてくびにかけるじゅず(二重に曲げて首にかける数珠/二重に曲げ、手首にかける数珠)」を注文。太宰治は電報で「カネヲクレタノム」と打ったのに、「金を呉れた。呑む」と誤読した家人に呆れられたという▼「乳がんは男性にも稀ながら発見される」。誤読のほうは書くまい。