【監視強化】(2015年9月号)


医療機関では、スタッフのマイナンバー管理はもちろん、患者さんの番号の取り扱いにも慎重にならざるを得なくなる。病歴などの個人情報に加え、マイナンバーの厳重な管理まで求められるようになるのだから、会計などのクラーク部門では情報流失を防ぐための負担が増すばかりだ▼政府は2017年夏をメドに、医療費控除の制度を使いやすくするという。患者さんの税負担を軽くするためだとしているが、納税者団体・患者団体などからは早くも「税負担よりも医療費負担を軽くしてほしい」といった声があがっている▼現在、患者さんは1年分の領収書を保存しておいて、確定申告の際に提出しなければ医療費控除を受けられない。ネットで手続きする場合でも、医療機関名や投薬の内容、自己負担額などを入力しなければならないため、かなり面倒だ▼政府では、マイナンバー制度で集積する医療費のデータを使うことで、大半の領収書は提出しなくてすむようになるとしている。しかし、そのためには健康保険のデータをマイナンバーにヒモ付けする必要がある▼政府は「患者の利便性向上」を大義名分として掲げているが、本当の狙いは社会保障分野での歳出削減にあることは明白だ。医療・税務当局としても患者情報をもとに、医業経営者への監視を強化したいというのがホンネだろう。