【普通を見直す】 (2020年5月号)


小中高の生徒たちのテストでの「珍解答」。そこには「正解ではないが素晴らしい発想」を見出すことができる▼「雪が解けると何になる?」。この問いに「水」と答えず「春になる」と書いてバツをもらっていた答案には、思わず唸った。二重丸をあげてもいい、瑞々しい発想ではないか。カッコ内の空欄を埋める問題では「うそつきは(人間)のはじまり」「水揚げされた魚は市場で(ラップ)にかけられます」。これにバツを付けて、泥棒、セリだけが正解だと教えていいものか▼「節分の鬼はなぜ豆が苦手か」。この難問に対する秀逸な解答が「大豆アレルギーだから」。他者との差異をあるがままに受け入れたうえで、姿かたちで差別することなく、鬼にも自分と同じアレルギーがあると自然に考えたようだ。これを「普通じゃない」などと捉えてしまっては、その時点でこの感性の芽を摘んでしまうことになりかねない▼新入社員も同じ。会社が長年積み上げてきた常識や慣習、そして「普通」とのギャップに悩むことになる。会社にとっての「普通」を押し付けているだけではないか、コロナショックで大変なこの時期だからこそ、あらためてこれまでの「普通」を見直すいい機会としたい▼「雪が解けると春になる」。ならば「コロナが収まると」……。発想を転換して「どうなるのか」をイメージしておきたい。