【〝九〟】 (2019年6月号)


物はしっかりと見る。話は正確に聞く。表情はいつも穏やかに保つ。手厚く礼儀正しい姿勢でいる。言葉は真心を持って偽らない。仕事は慎重にする。疑問には質問する。怒る時にはその後どうするか考えておく。道義を犯して利益を貪らない――「君子は九思あり」という。人格者が常に心掛けるべき9つのことだ▼君子ならぬ身としては、このなかで実践できていると胸を張れるのは「疑問には質問する」くらいのもの。新聞記者の仕事は「九分九厘」が取材だから、いつも質問ばかりしている▼社長さんはどうだろうか。「怒る時にはその後どうするか考えておく」などというのは、なかなか容易なことではないだろう。短気は損気だと分かっていても、怒気を抑えられないのが人間だ。だが損気を起こさないようにしないと「九損一得」になりかねない。9回損をして1回しか得にならないとしたら、費用ばかりかかって利益が出ない▼「仕事は慎重にする」というのも、もっともなことだ。そのうえで「時を得た一針は九針の手間を省く」のだから、きょうできることは今日中に始末をつけて仕事の効率化を図りたい▼さて、本紙はおかげさまで「創刊九周年」。編集室は「九尺二間に戸が一枚」といった趣だが、これからも物事をしっかりと見聞きし、「真心を持って偽らない」言葉を発信していきたい。