税務調査で狙われる「職住近接」

光熱費の割合に注意


 1階を店舗として使い、2階に自宅を構えて住んでいる個人事業者のAさんのもとへ、税務署の調査官がやってきた。申告をごまかしているつもりはなかったので、事前告知がなかったことを不満に思いながらも調査を受け入れた。

 

 調査官は、Aさんの了解のもと帳簿を過去3期分閲覧し、合間に商売の繁忙期や、アルバイトの雇用状況などを確認してきたという。そして一通り帳簿を見終わると、Aさんにこう言った。

 

 「上の階はご自宅のようですが、光熱費を私用と事業に分けている割合の根拠を教えてください」。

 

 私用か事業用か、まぎらわしい部分をざっくり分けてはいたものの、厳密な根拠と言われると難しい。いろいろと突っ込まれるうちにAさんは自信がなくなり、最終的には事業用として登録していた電話番号からプライベートの電話をかけていたことが決め手となり、当初申告より私用の割合が高くなるよう更正処分を受けたという。

 

 自宅兼事務所のように職住が接近する業種では、私用と業務の節目を明確には区分できないことも多い。根拠を示せずに、それらが私用と認定されてしまえばAさんのように加算税が付くことになる。意識的にごまかすつもりがなかったとしても、あやふやな部分があれば調査官に言質を与えたことになり、なんらかの更正を受けることになってしまうというわけだ。

 

 これは光熱費に限らず、例えば車の使用状況でも、社用車として登録しているのに社長一人がプライベートの用事に使いまわしているというようなケースでは更正処分の対象となる。もっとも逆に言えば、按分割合に確かな根拠があり、それを説明できるだけの資料があるのなら、どれだけ業務用の割合が多くても是認される可能性は高い。例えば説明のための資料としては、電話であれば通話明細、車であれば車両使用記録やETCカードでの通行履歴などが該当するだろう。(2018/07/23)