じつは2つある「出国税」

国外転出時課税制度とは?


 最新の2018年度税制改正で、日本国外へ出国する人に等しく税金を課す「出国税」が創設された。税収は日本の観光立国化を進めていくための財源にするという。

 

 当初は外国人旅行者からのみ徴収する予定だったが、各国と締結している租税条約に「国籍による差別の禁止」という規定があるため、最終的には日本人も含めて出国者全員を対象とすることが決まった。ここで、「あれ、確か数年前にも『出国税』が導入されなかったっけ?」と気付いた人は、かなり税金に詳しい。

 

 そのとおり、じつはすでに3年前「出国税」はスタートしているのだ。しかし15年に始まった「出国税」と、今回導入された「出国税」は全くの別物だ。

 

 どちらも出国の際に課される税金であるため「出国税」という通称は共通しているものの、正式名称はそれぞれ「国外転出時課税制度」と「国際観光旅客税」と異なる。

 

 制度3年目を迎えた「国外転出時課税制度」は、1億円以上の金融資産を持つ人を対象に、出国する時点での含み益に対して所得税を課すもの。日本でひと財産を築いたリッチ層が、シンガポールなどの税金が安い国に移住して株式などを売却し、税負担を逃れる行為を防ぐために創設された。

 

 日本からの資産持ち出しを防ぐ制度なので、たとえ海外に行っても資産を売却せずに帰国すれば、納めた税金は戻ってくる。また海外旅行や国外出張といった短期渡航は対象外だ。

 

 一方、来年1月からスタートする「国際観光旅客税」は、資産状況、渡航目的、国籍にかかわらず、原則的に日本を出る2歳以上の人全員に課され、税額は出国1回につき一人1000円と非常にシンプルな税金だ。

 

 「国外転出時課税制度」が1億円以上の金融資産を持って国外移住する人という限られた層をターゲットにしているのに対し、「国際観光旅客税」は旅行であれ何であれ日本を出る全ての人を対象にしているという違いがある。

 

 「国外転出時課税制度」は、たとえ最終的には日本に帰ってくるつもりであっても、長期間日本を離れるのであれば、いったん申告をして、さらに離日中の納税管理人を決めるなど、やらなければならない手続きが多い。相次いで創設された2つの「出国税」のどちらも納めなければならない社長さんはツライところだ。(2018/07/24)