「申告漏れ」と「所得隠し」の違い

ミスか故意かで判断


 本紙でもたびたび取り上げるが、有名人や大企業による税逃れが話題なることがある。だが、その内容をよく見てみると「申告漏れ」や「所得隠し」、あるいは「脱税」などと、表現が微妙に異なっていることに気が付いている読者も多いだろう。

 

 まず「申告漏れ」についてだが、これは経理上のミスや税法についての誤った認識などにより、所得として申告するべきものをしていなかったケースが当てはまる。納税者としては所得を隠すつもりはなく単なるミスや誤解であるから、「申告漏れ」として過少申告加算税や無申告加算税を課されるにとどまる。3つのうちでは最も〝軽い〟行為で、これを税逃れというのは気の毒かもしれない。

 

 2つ目の「所得隠し」は、申告するべき所得を申告していないケースだ。結果だけ見れば申告漏れと同じ行為だが、納税者が故意に申告しなかった場合は「所得隠し」となる。税額を減らそうと故意に所得を少なく見せかける行為には、加算税のなかでも最も厳しいペナルティーである重加算税が課されることもある。また通常の税務調査では、調査対象となる所得は過去5年分までだが、申告に偽りや不正があった場合には7年前まで遡って調査することが認められている。

 

 ただし「申告漏れ」と「所得隠し」のジャッジは難しい。「故意かどうか」というのは納税者にしかわからないことだから、税法でも申告漏れと所得隠しを明確に区分しているわけではない。あくまで便宜上の呼び分けといえるだろう。

 

 これらと明確に区分されるのが「脱税」だ。脱税とは、税務調査の結果、その過少申告や無申告の内容が悪質だと国税当局が判断し、検察庁に告発する行為をいう。申告漏れや所得隠しといった便宜上の区分ではなく、「所得税法違反」や「法人税法違反」という罪名を伴う容疑をかけられる。裁判で有罪となれば明確な犯罪行為だ。

 

 国税局査察部、いわゆる「マルサ」が動く案件は、この脱税に該当するものが多い。ただし、脱税の容疑で告発される「基準」として明確なものがあるわけではない。かつては脱税額1億円という国税当局の内部基準もあったと言われるが、最近ではもっと少ない額で査察部が動くこともある。(2021/04/07)