助成金を不正受給

詐欺罪に該当するも罰金なし


 スーパーコンピュータの開発を手掛けて急成長し、安倍政権とも深いつながりがあるベンチャー企業の経営者が、助成金の不正受給容疑で逮捕、起訴された。騙し取った額は、判明したものだけで6億円以上と言われている。

 

 では、6億円を騙し取ったことへの罰金はというと、なんとゼロ。脱税に対するお仕置きとしての重加算税は未払いの1・5倍、残業代の未払いは2倍の支払いが命じられるが、給料や税金を「払わない人」よりも税金を「騙し取った人」のほうが悪さの度合いが軽いというのか、とにかく助成金の不正受給への罰金はない。

 

 助成金の不正受給がバレたときは、不支給決定がされると同時に、不正に受給した分の返済義務が当然ながら生じる。だが、当該助成金以外に受けている雇用関係の助成金などが支給停止されるのは、虚偽の書類で申請するなど特に「悪質」と判断されたときに限られる。

 

 しかも、その判断がなされても支給停止期間は3年間のみという甘さだ。これでは「バレたら返せばいい」と割り切って申請する不届き者が出るのも必然だが、決してマネはしないようにしたい。

 

 助成金の不正受給は「書類の偽造により、公金を詐取しようとする犯罪」にあたり、刑法246条の詐欺罪に該当する。スパコン疑惑のように、政権に近い関係があっても東京地検特捜部にきっちりと起訴される。「ほんの出来心で」などという言い訳は通用しないのだ。なお、助成金を受け取れば、その額は益金として法人税の課税対象になる。また、不正受給が発覚して自治体などへ返還した額は、その事業年度の損金として処理できる。(2018/05/09)