有給休暇の時季変更権

「代わりがいない」では通用しない


 社員から有給休暇取得の申請があったときには、原則として労働者の請求する日に取得させなければならない。覚えておきたいのは、労働基準法で、労働者の権利として「与えなくてはならない」と定められている点だ。

 

 つまり、会社の「許可」や「承認」は不要ということになる。もちろん、休暇の利用目的を問うこともできない。そのあたりを勘違いすると、労働問題に発展しかねない。ただし、請求された日に有給休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」は、休む日をずらすことも認められている。これを時季変更権というが、あくまでも例外的なものであるため、万能の武器として振りかざすのは避けたほうがいい。

 

 判例では、時季変更権が認められるのは、大量の従業員が一斉に休暇申請したことによる代替人員の配置が不能の場合に限られている。そのため、一人の社員やアルバイトが「来週の月曜日は私用で休みます」と申請したとしても「そんなに急では代わりの人を配置できないよ」とはいえないわけだ。

 

 「忙しいからダメだ」と申請を認めなかったにもかかわらず当該労働者が会社を休んだとしても、正当な時季変更権の行使とは認められない。当然、無断欠勤扱いにもできない。1年中、休む間もなく働いている社長さんにしてみれば「甘すぎる」と感じることだろうが、ルールはルールだ。なお、有給休暇は6カ月間継続して、その全労働日の8割以上の出勤率があれば、雇用の形態を問わず10日付与しなければならない。(2018/04/20)