事業と無関係の開業祝い金

友人でも事業所得?


 新規でお店を開業すれば、事業関係者から祝い金を頂戴することも多いだろう。それが明らかにビジネスに関する相手からのものであれば「事業所得」として課税対象となりうることも納得できるが、友人から受け取ったものはどう処理するべきか悩むこともある。

 

 仕事上のお付き合いが本業と直接関連していないことも多々ある。例えば歯科医院を開業して医療機器メーカーから祝い金を受けた場合に、「診療行為とは無関係であり、事業所得として計上する必要はないのではないか」と考える例も少なくない。事業所得の計算では、その金銭の授受の原因が事業に直接的に関連していなくても「事業の遂行に付随して生じたもの」であると税務署が判断すれば、それは事業所得として収入となる。税務行政特有の「疑わしきは罰する」ということだ。

 

 医療機器メーカーから祝い金をもらった歯科医院にしても、事業所の開設に伴って受け取った以上、ほぼ間違いなく事業所得とみなされるだろう。きちんと事業所得として計上して、税務処理しておくべきだ。なお、友人からの祝い金については、それが社会常識で考えて高額すぎるものでない限り、税務上の問題は生じない。ただし「医者の世界でお祝い金1本(100万円)は当たり前」といった、業界特有の常識を振りかざしても、それは「世間の非常識」として一蹴されるだけだ。

 

 国税不服審判所では、「租税法は民法上の概念とは異なる」という理由で、「個人からの祝い金であっても、事業の遂行に付随して生じた収入」として課税することを妥当とする裁決を2002年に出している。(2019/02/19)