領収書のスマホ撮影もOK

スキャナ保存ってなに?

要件緩和で利用拡大か


 複数の国会議員の間で常態化していた「白紙領収書問題」について、政治資金規正法を所管する高市早苗総務大臣は、白紙の領収書に自ら手書きすることについて「法律上の問題は生じない」と強弁したが、民間企業が税務調査を受けて白紙領収書であることが明らかになれば、即レッドカードを突き付けられるだろう。国会議員を反面教師に、会社は領収書の適切な取り扱いについて改めて考えるきっかけにしたい。領収書と言えば、紙の情報を電子データに変換して保存する「スキャナ保存」の要件が平成27〜28年に掛けて緩和される。スマートフォン(スマホ)で撮影したデータも証拠書類として認められるようになった。最近の改正内容を踏まえてスキャナ保存について整理する。


 会社が受け取る領収書や注文書、契約書といった文書は、法人税法の規定により、原則7年間の保存が義務付けられている。これらすべてを紙で保存するとなると、膨大な量の文書が会社に溜まり、場所を取られてしまう。そこで国は、平成10年に電子データの保存に関する決まりごとを盛り込んだ「電子帳簿保存法」を定めた。

 

 同法は昨年と今年に内容が見直された。注目すべきは、紙の情報を電子データに変換して保存する「スキャナ保存」が大きく変わったことだ。

 

 スキャナ保存では、以下の3点が変更された。まず、平成27年以前に電子保存が認められていたのは、記載が3万円以下の領収書のみだった。この金額基準が撤廃され、すべての領収書や契約書を電子保存できるようになった。これで金額によって保存の仕方を変えなければならないという煩雑さが解消したことになる。

 

小規模事業者は税理士関与で負担軽減

 また、今年の改正で、これまで認められていなかったスマホやデジタルカメラでの撮影でも可能となった。社員は領収書を自分のスマホで撮影し、画像データを会社のサーバーに送信するだけでよくなり、経理担当者が膨大な文書をスキャニングする必要はなくなった。

 

 さらに小規模事業者以外は経理担当者がスキャンデータに電子的な日付印を押し、内部監査部門などの社内の別部署の人間が最終確認しなければならないが、従業員がおおむね20人(商業かサービス業なら5人)以下の小規模事業者は、税理士の関与によって負担を軽くする特例措置を使えるようになった。煩雑な定期チェックや最終確認を税理士に任せられるようになり、社員に過大な責任を負わせずに済む。

 

 なお、スマホ撮影や小規模事業者特例を利用するには、始める3カ月前までに国税当局に申請しなければならず、いまから導入を決めても年内にスタートさせることはできない。

 

導入までの高いハードル

 多少なりとも使い勝手が高まっているとはいえ、導入までのハードルがいまだ高く、紙の保存からスキャナ保存に切り替えた企業は少ない。

 

 領収書などの文書をスキャニングしただけのデータは紙の文書以上に改ざんが容易であることから、電子帳簿保存法ではスキャン保存に厳しい要件を求めている。同法では「適正事務処理要件」として、①保存の各過程を別の人間に行わせる、②事務処理手続が適正かどうかを定期的にチェックする体制を完備する、③問題が発生したときの報告や再発防止にかかる規程を整備する――といった対応を求めている。この要件を満たそうとすると、人材配置や設備投資でコストが掛かってしまう。

 

 例えばスキャナ保存の過程で、画像データの「スキャン日時」や「スキャン以降に編集(改ざん)がないこと」を証明するための電子的な日付印(タイムスタンプ)を押さなければならない。このシステムは、導入コストのほか、システム保守費用やタイムスタンプの年間利用件数に応じた従量課金といったランニングコストが掛かり、年間10万円以上の負担を見込まなければならない。スキャナ保存をすると紙の書類の保存が必要なくなり、これまで保管のために使っていた事務スペースを有効活用できるのはメリットだが、紙の文書を保管するためのレンタルスペースを借りたほうが安上がりということもあり得る。

 

 電子保存したデータは紙の文書と比べて閲覧や検索が容易であるため、スキャナ保存で経理を効率化できる。また、閲覧・検索が簡単になることで、税務調査の時間が短縮される可能性もある。

 

 紙による保存の場合、調査官が必要とする資料をファイルや段ボールのなかから探し、それをいちいちコピーして渡さなければならなかった。これに対し、スキャナ保存してそのデータを帳簿と紐づければ、探す手間がなくなるうえ、データをプリンターで出力するだけで済む。税務調査が効率化されることは一見納税者にとってもメリットのように思えるが、都内に事務所があるA税理士は「調査官は短縮できた時間に別のことを調べようとするだろうし、電子データで検索しやすくなるというのは、丸裸になるようで怖いという納税者はいるだろう」と、税務調査の精神的負担がむしろ増すおそれを危惧する。

 

 スキャナ保存には金銭面のハードルやデメリットがあるが、いくつかあるメリットを踏まえ、顧問税理士に相談して導入するか否かを決めたい。

(2016/12/06更新)