金投資のチャンス到来?

消費税率アップで2%分の利ザヤ


 金投資で儲けを出すチャンスがやってきた。金の価格は多少の浮き沈みはありながらも右肩上がりの上昇曲線を描いており、利益を得やすい投資対象であるうえ、金地金を消費税の税率引き上げ前に買って引き上げ後に売ると、増税分の利ザヤを抜ける。10月には増税の負担が納税者にのしかかるが、金の売却に関して言えば税率引き上げが有利に働くことになるわけだ。


 金地金が国内で本格的に投資対象となったのは半世紀前のことだ。1973年までは日銀が決める「公定価格」でしか取引できず、価格の大幅な上昇は見込めなかったため、投資対象としてのうまみは少なかった。

 

 しかし73年に輸入が自由化され、購入価格が国際相場に連動するようになり、状況が一変した。田中貴金属工業の公表価格で見ると、輸入が自由化された初年度(73年)の平均価格はグラム当たり958円だったが、翌74年には1598円に急騰。多少の浮き沈みはありながらも右肩上がりで価値が高まり、2018年には4543円にまで上昇した。

 

 これは10年前の2937円と比べて54・7%増、20年前の1118円と比べて306・4%増の数字で、輸入自由化以降は常に価格の上昇が見込まれてきたことから、財産形成の一手段として浸透していった。

 

増税前に必ず訪れる購入ブーム

 注目すべきは、国内での人気急騰は、消費税の導入時と引き上げ時の直前に必ず起こっているということだ。田中貴金属の販売量で見ると、消費税率が8%に引き上げられる前の13年は前年比で63・1%増加した。2018年も17年と比べて増加し、35・7%も増えている。また国内での金の人気は輸入量に直接反映されるが、増税前には必ず輸入量も増えてきた。

 

 増税前に金の投資熱が高まるのは、金に掛けられる消費税の仕組みを利用して利ザヤをとろうと考える人が増えるためだ。金は購入時に消費税を支払い、売却時に消費税を受け取れる。金を1グラム5千円で10キロ購入すると、商品の代金5千万円と、消費税8%分の400万円の合計5400万円を支払う。

 

 これを消費税率が10%に引き上げられてから売ると、金の価格が変わらなければ、商品代5千万円に加え、税率10%分の500万円を受け取れる。金取引を事業にしていない限り受け取った消費税の納税義務はないため、増税分の100万円が手元に残ることになる。売買に掛かる諸経費は多少必要だが、単純計算で2%の利ザヤは抜けるわけだ。

 

 ただし過去の消費増税を振り返ると、税率引き上げの年には価格が下がっていることに注意を払う必要がある。消費税が導入された1989年の金の年平均価格は前年比6・5%減、税率5%に引き上げられた97年は4・8%減、8%に引き上げられた2014年は2・5%減と、必ず下降しているのが実情だ。

 

 金の価格は国内需要だけではなく全世界の需給バランスが絡むため、消費増税の直後の売り抜きが与えた影響がそこまで大きいとは言えないが、急落リスクを織り込んで投資する必要がある。

 

5年超の長期保有で税負担半減

 また売買に掛かる諸経費の他に、儲けた分は所得税の対象となることも考慮しなければならない。取引実態によって譲渡所得や事業所得、または雑所得のいずれかの所得として税額を計算する。営利目的で継続的に金地金の売買をしているなら事業所得もしくは雑所得で、個人が保有している金地金を売却したなら通常は譲渡所得に該当する。

 

 金地金の売却による譲渡所得は給料などの他の所得と合わせて総合課税の対象となる。譲渡所得の計算方法は、金地金を保有していた期間で2つに分かれる。保有期間が5年以内(短期譲渡)なら課税譲渡所得は「(金地金の譲渡益+金地金以外の総合課税の譲渡益)― 特別控除50万円」、5年超(長期譲渡)ならその半額となる。

 

 すなわち、長期で保有していた方が税負担は少なくて済む。前回の増税直前の2013年前後に消費税率5%で金を購入した人は、消費税率が10%になってから売れば5%分の利ザヤを抜けることになるうえ、所得税でも有利な計算ができる時期を迎えることになる。一方、もし売却で損が出た場合には、ほかの譲渡所得とは損益通算できるが、給与所得などほかの区分の所得とは損益通算できない点に注意しておきたい。

 

 金投資で消費税の増税分の儲けが出せるという仕組みは、消費税そのものに問題があることの証拠にも見えるが、少なくとも合法的なスキームである以上、ベストタイミングを見極めた上で購入を検討したいところだ。

(2019/04/08更新)