設備投資で税優遇

手続きはお早めに

固定資産税が3年間ゼロ


 今年6月に施行された生産性向上特別措置法では、中小企業の設備投資について3年間の固定資産税を最大ゼロにする特例が盛り込まれた。法人税の優遇とは異なり、赤字企業にもうれしい制度だが、手続きの際には各所に申請する必要があり、時間がかかるという難点がある。固定資産税の賦課期日は毎年1月1日であるため、今年中に設備投資を行って来年から税優遇を受けようと思うなら、すぐにでも準備に取り掛からなければならない。


 今年6月6日にスタートした特例は、資本金等1億円以下の中小企業が労働生産性を上げる設備投資をすると、設備にかかる固定資産税を3年間軽減するというものだ。前年度まで似た制度があったが、より減税幅を拡大するために改組され、それに伴い要件などにも手が加えられた。

 

 特に大きな変更点としては、これまでは固定資産税を3年間にわたり半分にするとしていたものを、最大ゼロにまで拡大したことがある。どこまで軽減されるかは自治体によって異なるが、中小企業庁が実施したアンケートによれば91・7%の自治体がゼロ税率を採用すると答えている。例えば耐用年数10年で1500万円の設備を取得するケースなら固定資産税を3年間で50万円弱軽減できることになり、その恩恵は大きい。

 

 ただし設備を買えば自動的に固定資産税が軽減されるわけではなく、その設備が生産性向上などの要件を満たすことを証明する書類に加え、「先端設備等導入計画」を作成し、市区町村の認定を受けなければならない。計画書の作成自体はそれほど難しいものではないが、内容について税理士など認定支援機関の確認を受けることも必要だ。

 

余裕をもって準備を

 一連の流れは 図 のとおりで、ざっくり言うと、まず取得する設備が要件を満たしているという証明書をメーカーを通じて入手し、導入計画を作成した上で支援機関の確認を受け、それらを全てそろえて自治体に計画申請する。認定が下りて、ようやく設備そのものを取得することになる。

 

 このときに忘れてはならないのは、前年までの制度であれば設備取得後の事後申請が可能だったが、現行制度では認定が下りる前に設備投資をしてしまうと固定資産税の軽減が受けられないという点だ。例外として工業会の発行する証明書については年内の追加提出が認められているが、設備の取得は計画書の認定を受けてからでなければならない。

 

 手続きの流れを見れば分かるとおり、税優遇を受けるためにやりとりしなければならない書類が多く、またその相手も様々だ。中小企業庁は同制度についてのリーフレットで「経営革新等支援機関の事前確認や市区町村における認定事務に一定以上時間を要する場合があります」として、余裕を持った準備を呼び掛けている。

 

認定には時間がかかる

 これから年末が近づくにつれて様々な書類申請が行政機関に集中し、通常よりも認定が手間取ることも考えられる。例えば法人税の優遇などを受けるために必要な「経営力向上計画」では、作成された計画を受理してから実際に認定が下りるまでの標準処理期間は約30日とされているが、年末に駆け込み申請が殺到することを踏まえて昨年10月にはギリギリの申請では「年内に認定を受けられない可能性がある」として、中小企業庁が早めの書類提出を呼び掛けていた。もし今年中に設備投資を行い、来年から固定資産税の優遇を受けたいと考えているなら、すぐにでも準備に取り掛かるべき時期に差し掛かっていると言える。

 

 なお、前年度までの固定資産税の減免措置では、年内の認定が間に合わなければ本来3年間受けられるはずの税優遇が2年になってしまうという落とし穴があったが、現行制度では計画認定後の設備取得が条件となっているため、同じ失敗は起きない。とはいえ、年内に間に合わなければ税優遇を受けられるのは再来年からの3年間になってしまう。もし税負担の軽減を織り込んだ来年の資金繰り計画などを立てていれば、影響は大きい。やはり余裕を持って手続きを進めておくに越したことはないだろう。

 

 最後に、非常に分かりづらい点として、固定資産税を3年間最大ゼロにするために必要な「先端設備等導入計画」は、従来からある「経営力向上計画」とは、あくまで別物ということを覚えておきたい。一定の生産性向上を求められることや、計画認定によって固定資産税の減免が受けられること、補助金の採択で加点要素となることなど類似点が多いが、前者は市町村に提出し、後者は国に提出するもので管轄が異なる。

 

 また補助金の加点などのメリットは重複して受けることができるが、固定資産税の減免については併用できないといった違いもある。固定資産税をゼロにするために必要なのは「先端設備等導入計画」だが、両者は申請内容も似ているため、両方とも認定を受けて、法人税、固定資産税、補助金、金融支援など様々な優遇を駆使することも検討してみてはいかがだろうか。

(2018/11/01更新)