株式の相続評価減、生保の控除枠拡大……

税制改正大綱から漏れたアノ見直し

税収減に財務省が難色


 タワーマンションにかかる固定資産税の見直しや、事業承継税制の要件緩和など、2017年度税制改正には以前から改正が目されていた多くの見直しが並んだが、その反面、改正がささやかれていたものの実際には盛り込まれなかった見直しも数多くある。経営者の相続税対策に大きな影響を与えるものもあったが、次年度以降に見送られることとなったようだ。ここでは、17年度大綱に盛り込まれなかった見直しをまとめてみた。


 各省庁から出された改正要望のなかでも、最も資産家の相続税対策に影響を与える見直しとして注目されていた上場株式の評価ルール見直しが見送られた。現状では、株価はそのまま相続財産としての評価額となっているが、価格下落リスクを踏まえて株価を1割減して評価すべきと金融庁が要望していた。

 

 金融庁は数年前から同種の要望を財務省に上げ続けており、当初は3割減としていたものを今回は1割減へと妥協しての要望だったが、17年度大綱には盛り込まれなかった。逆に株価が上昇する可能性もあることや、相続直前に株式を大量購入して税負担を減らす節税策がはびこることを懸念したものと見られる。実現すれば資産家の相続税対策に大きな影響を与えることが確実なだけに、次年度以降も議論の行方に注目していきたいところだ。

 

 同じく相続税関連では、現行「500万円×法定相続人の数」を認められている生命保険金独自の控除枠について、さらなる拡充を求めていた生命保険協会の要望が見送られた。協会が求めていたのは、残された家族の生活保障のために「配偶者分500万円+未成年の被扶養法定相続人の数×500万円」を加算するというもの。かなり〝高め〞の要求だけに、実現すれば相続税対策の大きな助けとなっていただろう。

 

計画的生前贈与へのインセンティブも見送り

 中小企業の円滑な事業承継を促すため、自社株を計画的に後継者に譲り渡す贈与について何らかの税優遇を設ける案が議論されていたが、実現には至らなかった。承継の際に発生する税負担を軽減する「事業承継税制」については、要件の緩和や、相続時精算課税制度の併用を認める見直しが大綱に盛り込まれているため、インセンティブまで一気に与える必要はないと判断されたと見られる。

 

 減少し続ける中小企業の事業承継は政府にとっても喫緊の課題であるため、次年度以降に盛り込まれる可能性は低くないと言える。

 

 企業の租税回避行為が税務署に否認されたときに、その節税法をアドバイスした税理士やコンサル会社に法的な罰則を設ける案が検討されていたが、見送られた。国際的な大企業の租税回避行為に対する規制は年々厳しくなっており、次年度以降も引き続き導入が議論されることになる可能性が高い。ただし導入されたとしても対象は国際的な大企業が行うような巨額の税逃れに限定される見込みで、中小企業には当面関係のない話かもしれない。

 

 自動車の所有にかかる自動車税について、普通自動車を購入した人の初年度の税負担を免除すべきとの要望を経済産業省が出していたが、大綱には入らなかった。自動車の買い替え需要を後押ししたい経産省はそのほかにも自動車ユーザーに対する税優遇を求めていたが、税収減を懸念する総務省や財務省の意見を政府が受け入れた形となった。国内の基幹産業である自動車をめぐる税と経済のバランスは、今後も大きな議論の的となりそうだ。

 

相続時精算課税制度の拡充も盛り込まれず

 政府・与党ではさほど検討の対象とはならなかったが、資産家に関係するテーマとして、日本公認会計士協会が要望した2つの項目がある。

 

 1つ目は、2500万円までの生前贈与が非課税となり、それを超えた部分について一律20%の贈与税が課される「相続時精算課税」の拡充だ。同協会は、制度を使って贈与した土地への小規模宅地の特例や、非上場株式の株価が値下がりした時の救済策など、納税者が有利になる複数の見直しを要望していたが、多くは盛り込まれなかった。唯一実現したのが、事業承継税制で猶予が取り消された時の、相続時精算課税制度の併用だ。

 

 2つ目は、若年層への資産移転を促すため、受贈者の年齢によって贈与税の税率を変動すべきという案だ。現在ある一括贈与の非課税特例のように用途を特定しないことで資産移転が活発になるとの狙いだったが、こちらも大綱には盛り込まれていない。

 

 これらのほかにも、遺言控除の創設、ゴルフ場利用税の廃止などさまざまな税目が議論の的となったが、17年度改正への盛り込みは見送られている。もっとも税制改正の内容が正式に決定するのは改正法案が成立する3月となるため、それまでに〝滑り込み〞で新たな見直しが盛り込まれる可能性もゼロではないことに留意したい。

(2017/01/30更新)