公示地価5年連続でアップ

「地方圏」28年ぶりに上昇


 国土交通省がこのほど発表した公示地価によると、今年1月1日時点の地価の全国平均は前年比1・4%のプラスで、5年連続の上昇となった。昨年までは三大都市圏と地方中枢都市は上昇していた一方で、それ以外の地域は軒並み下降傾向にあったが、今年は地方中枢都市を除く地方圏の変動率が28年ぶりに上向きに転じた。


 全国平均を押し上げたのは商業地で前年から3・1%上昇している。三大都市圏では東京圏で前年比5・2%、大阪圏で6・9%、名古屋圏で4・1%と、いずれも商業地の全国平均を上回った。変動率がさらに高いのが札幌、仙台、広島、福岡の地方中枢四都市で、11・3%のプラスとなっている。

 

 住宅地は全国平均で0・8%上がり、中でも地方中枢四都市の前年比が5・9%で高い。工業地も全国平均の上昇率1・6%に対し、四都市は5・6%だった。

 

 三大都市圏と地方中枢都市ほどの上昇ではないものの、地方圏の地価も回復傾向にある。地方中枢都市を除いた地方圏の地価は全用途で前年比0・1%の上昇で、バブル期以来28年ぶりのプラスとなった。地方圏の用途別では、商業地が前年比0・3%、工業地が0・8%上昇し、住宅地は横ばいだった。

 

 全国的に地価が上昇傾向にある中で、特に目立つ伸びを見せた地域が、外国人観光客に人気のスキーリゾートであるニセコの所在地、北海道虻田郡倶知安町だ。1位の「倶知安町南1条西1丁目40番1外」(商業地)は前年からの変動率がプラス57・5%にもなっている(表1)。4位にも倶知安町の住宅地がランクイン。トップ10はほかに、沖縄4地点、大阪3地点、福岡1地点で、いずれも3割以上の上昇となった。

 

台風被災地は大幅下落

 反対に下落率が最も高い地域は長野県の「長野市豊野町豊野字内土浮323番45」。変動率はマイナス13・6%となった(表2)。ワースト2も長野市の土地で、福島県郡山市がこれに続く。いずれも昨年の台風19号で甚大な被害を受けた地域で、浸水などの被害によって需要が減退したことが、地価の大幅下落につながったとみられる。

 

 一方、2018年の西日本豪雨で昨年の公示地価が大きく下がった地域では、今年は回復傾向が見られる。昨年の地価下落率が最も高かった岡山県真備町の一部(変動率マイナス17・7%)は2%の上昇に転じた。

 

 ただし、今回の公示地価で重要なことは、あくまでも年初の段階での価格であり、新型コロナの感染拡大による影響は考慮されていないということだ。訪日客の減少や消費マインドの減退によって、今後は地価が全国的に下落することも懸念されている。

 

上位10地点はすべて東京

 地価が高い10地点はいずれも東京都(表3)で、用途別に見ても、住宅地、商業地、工業地それぞれのトップ10すべてが都内の土地となっている。全国で最も地価が高かった地点は「山野楽器銀座本店」(東京中央区銀座4丁目)。1平方メートルあたり5770万円となり、5年連続で過去最高を更新した。

 

 だが、上昇率は17年の25・9%をピークに落ち着きを見せ、昨年は前年比3・1%、今年は0・9%となった。国土交通省は「銀座地区の再開発事業が一巡し、有名ブランドの出店に一服感が見られる」と、銀座の地価上昇率が緩やかになっている背景を説明している。

 

「東京23区」が突出

 都道府県庁所在地ごとの商業地の最高価格を見ると東京23区(5770万円)は、大阪市(2870万円)や名古屋市(1850万円)、横浜市(1510万円)、福岡市(1100万円)を大きく上回る。また都道府県庁所在地の住宅地の平均価格についても、東京23区が1平方メートル当り63万1300円でトップとなり、大阪市(24万6800円)や横浜市(23万1600円)のそれを大きく引き離している(表4)。最も低いのは秋田市の3万2300円で、ほかに山口市、青森市、鳥取市、水戸市が3万円台だった。

(2020/04/30更新)