経営者を債務から解放しろ

個人保証はもうたくさん!

3年で「保証なし」4倍に


 中小企業経営者が金融機関から融資を受けようとすると、これまでは経営者個人の連帯保証を求められることが当たり前だった。しかし個人保証を外すための枠組みを定めた「経営者保証に関するガイドライン」が2014年にスタートしてから3年が経ち、徐々にそうした状況に変化が起きているようだ。会社としての取り組み次第では、社長を悩ませる個人保証債務から解放される道が開けつつある。


 中小企業経営者の個人保証を外すために企業と金融機関それぞれが取り組むべき基準を定めた「経営者保証に関するガイドライン」が適用開始から3年を経過し、中小企業庁と金融庁は実際にどれだけの融資契約で個人保証が外せたかという実績を公表した。

 

 それによれば、商工組合中央金庫や日本政策金融公庫といった政府系金融機関で昨年4月〜9月の半年間に行った新規融資のうち33%に当たる3万6815件が個人保証なしの融資だった。一方、メガバンクや地銀、信用金庫などの民間系金融機関では、同時期に行った新規融資のうち、個人保証を外せたのは14%に当たる24万1882件だった。またそれぞれ、既存の契約について期限延長の際などにそれまで付いていた個人保証を外せた契約が、政府系で1354件、民間で1万8185件あった。

 

 民間系金融機関ではいまだに1割強、政府系でも3割強の割合にとどまっているとはいえ、個人保証なしの融資はガイドラインの適用開始以来、着実に増えつつある。政府系では適用を開始した2014年2月〜3月頃に比べると、新規融資に占める個人保証なしの割合は2倍以上に増えているし、民間系でも1カ月当たりの個人保証なしの融資件数は4倍以上に増加している。経営者を悩ませる個人保証から解放される可能性は、格段に高くなっていると言えるだろう。

 

 具体的に、個人保証を外すためには何が必要なのだろうか。ガイドラインでは、企業が金融機関に対して保証解除を求めるためには、①法人と経営者の資産関係が明確に区分・分離されていること、②返済能力に問題のない財政基盤があること、③財務状況を適時適切に開示する経営の透明性を確保すること――の3条件を満たすことが必要だとしている。金融機関にはガイドラインに従う法的な義務はないものの努力義務として求められていることから、上記の条件を満たした企業からの交渉については、少なくともテーブルにつかざるを得ないというわけだ。

 

交渉には「ガイドライン」を利用

 実際に交渉をして保証を外せた建設機械のリースを行うある会社は、現経営者の抱える多数の債務保証に不安を覚え、ガイドラインを利用して準メーンバンクである信用金庫に保証解除を求めた。交渉の結果、会社と経営者の資産経理が明確に分離できていること、会社の資産や収益力で十分な返済能力を見込めたことなどから、今後は経営者保証を提供しないという条件を勝ち取った。

 

 この会社はガイドラインの求める要件を完全に満たしているケースだが、先に挙げた3つの条件を厳格に満たしていなくても個人保証は外せる。

 

 建設業を営む別の会社は、会社から経営者個人への立替金勘定があった上、法人と経営者の資産の明確な区分ができているとは言えなかったが、立替金勘定が近年減少していることや、今後さらに解消に向けた減少を図る意向が示されていることが考慮され、個人保証を外すことができたという。

 

 個人保証を外せた例に共通しているのは、返済へ向けた確かな意思があることと、それを裏付ける客観的な見通しがあることだ。成功事例の多くでは、専門家の支援を受けた上での中長期的な事業計画の策定と進捗の報告、財務状況の正確さを確保できる透明性が金融機関に評価され、保証の解除につながっている。

 

個人保証解除には「ABL」の活用も

 また、たとえ条件を満たせず個人保証を外せなくても、商品の在庫や売掛金といった「ABL(動産・債権担保融資)」を活用することで個人保証の解除につなげるという手法もある。

 

 都内で小売業を営むある会社は、法人と経営者の資産区分が明確に分離されておらず、財務情報の適切な開示にも問題があったため、個人保証を外すことは難しいと判断された。しかし商品がブランド化されていて在庫の固定化の懸念が小さかったことなどから動産担保としての評価が高く、商品在庫を担保とすることで、経営者保証を提供せずに融資を受けられたという。

 

 金融庁によると、このABLなどの条件を付けることで個人保証を外せた例は、昨年4〜9月の半年間で228件あった。もちろん自社の状況を踏まえての話にはなるが、交渉が難航した時の一策として検討しておくことは意味がある。

 

 個人保証を外すためには、最終的に「返済能力に問題がないこと」を金融機関に納得させなければならないことに変わりはなく、企業自身にも財政基盤を強化し、経営努力することが求められる。だが保証債務からの解放は積極的な事業展開につながるだけでなく、社長自身の人生プランや事業承継にも大きく関わってくる。最初から「個人保証は取られるもの」とあきらめるのではなく、粘り強く交渉して有利な条件を勝ち取りたい。

(2017/04/03更新)