シャープも狙っていた?

中小企業だけの税メリットとは

吉本興業は成功!減資で中小企業化


 台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業による買収が決定したシャープはこれまでにさまざまな経営再建策を模索してきたが、特に昨年大きな話題になったのは、減資による「中小企業化」だ。当時のシャープの狙いは、中小企業だけが受けられる税優遇を受けることだったとされる。このように大きな規模の会社が減資をすれば税優遇の対象になる現状について、日本税理士会連合会(日税連)が疑義をはさみ、独自の意見を提示した。中小企業の定義に当てはまるか否かは経営に大きな影響を与える。すべての会社にとって人ごとではない。


社員1000人超は優遇策適用除外?

 1200億円超の資本金を1億円に減らす方針であることが報じられた当時のシャープの狙いは、資本金を取り崩した分で大幅な累積損失を穴埋めするとともに、税制上の「中小企業」になることだったとされている。租税特別措置法では、「資本金1億円以下」の会社を中小企業としていて、大企業と比べて財務基盤が強固ではない中小企業に対し、税金面の優遇制度を設けている。シャープはこの税優遇を狙った減資に批判が集まったことを受け、資本金を5億円に設定した。仮に中小企業化を実現していればわずかばかりの〝延命〞は可能だったかもしれない。

 

 その一方で、吉本興業は昨年9月に中小企業化に成功している。シャープと比べて大規模企業としてのイメージが弱かったためか、世間の風当たりはシャープほどには強くなかったようだ。

 

 シャープの当時の思惑のみならず、大企業が減資によって恣意的に税負担を軽減できる制度そのものを問題視する声は近年高まっている。平成27年度税制改正大綱で政府は、資本金基準の見直しを示唆している。

 

 日本税理士会連合会も同様に、現行の中小企業基準は見直しの必要性があるという立場をとっている。日税連の諮問機関である税制審議会は今年3月中旬、神津会長の諮問に対する答申を取りまとめ、現行の資本金基準に加えて従業員数基準を新たに採用する必要性を主張している。

 

 審議会によると、業種ごとに異なる基準を設定しないとすれば、従業員数基準は「1千人以下」が適当としている。この基準に則れば、国内連結で従業員数2万397人(うち関係会社5592人)のシャープは、たとえ減資で資本金を1億円以下としても中小企業にはなれず、税優遇の対象にならないことになる。一方の吉本興業の従業員は644人であるため、日税連の提示どおりに見直されても中小企業として税メリットを受けられることになりそうだ(従業員数は両社ともにホームページより)。

 

固定資産税減税の新制度

 シャープや吉本興業が世間の批判を受けてでも活用したいと考えた中小企業税制にはどのようなものがあるのか、あらためて整理したい。

 

 平成28年度税制改正で創設される中小企業向けの税制には、固定資産税の設備投資減税がある。新税制では、国の認定に基づいて生産性を高める機械装置を新規で取得したときに、固定資産税(税率1・4%)の課税標準が3年間、2分の1に軽減される。固定資産税に関する設備投資減税はこれまでになかった制度で、法人税減税と異なり、赤字中小企業でも恩恵を受けられるのが特徴だ。

 

 機械装置設備の導入時の中小企業向け減税制度はほかに、一定の設備を取得したときに30%の特別償却ができる中小企業投資促進税制がある。資本金3千万円以下の会社は7%の税額控除も選択でき、規模が比較的小さい企業の使いやすさを考慮した制度となっている。さらに同税制には上乗せ措置として、生産性が向上するなど一定の要件に該当する設備を購入したときには即時償却か7%の税額控除(資本金3千万円以下は10%)を選択できる仕組みも設けられている。

 

 大きな投資がなかなかできない中小企業にとって使い勝手が良いのが、少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例だ。取得価額30万円未満の減価償却資産の全額即時損金算入が認められる。

 

 また、黒字中小企業がメリットを受けているのが法人税の軽減税率で、所得金額のうち800万円以下の部分の税率が15%(本則の軽減税率19%)に軽減されている。

 

 欠損金を繰り越して翌年度以降の課税所得と相殺できる欠損金繰越控除制度でも中小企業には優遇措置がある。大企業は繰越控除をする事業年度の所得金額の65%(平成29年4月1日以降は50%)が控除限度額だが、中小企業にはこうした制限が設けられていないため、フル活用したい。

 

交際費や「所得拡大」への取り組みでも優遇

 交際費支出で中小企業が損金算入できるのは、飲食費の50%か、交際費の800万円までのうち、税負担が少なくなる方だ。一方、大企業は、「飲食費の50%」しか適用できない。

 

 給与支給額を増加させた企業がその増加額の一定割合を税額控除できる所得拡大促進税制では、大企業が税額控除できるのは法人税額の10%までであるのに対し、中小企業は20%までとされている。また、制度適用のために必要な賃上げ割合では大企業のハードルが高くなっている。

 

 このほか、貸し倒れ引当金を一定額まで損金算入できることや、研究開発税制の税額控除割合が大企業のそれと比べて加算されること、外形標準課税や留保金課税が不適用になることなど、中小企業優遇メニューは複数用意されている。シャープが一時、世間の批判を受けてでも「中小企業」になって受けようとした優遇制度を、本当の意味での中小企業が使いこなせないのは大きな機会損失である。中小企業税制の詳細をあらためてチェックしておきたい。

 

(2016/05/30更新)