ネットの儲けに厳しい目

仮想通貨、動画・アプリ配信……


 仮想通貨取引による申告漏れの金額が、わずか数年で100億円にも上ることが明らかになった。今回発覚した課税逃れは氷山の一角とも言われ、国税当局は仮想通貨を含めたネット取引の不正摘発に本腰を入れ始めている。国税当局の新事業年度が始まった7月からは、電子商取引情報の収集や分析を行うプロジェクトチームが全国の国税局・国税事務所に設置された。監視が強まるネット取引の申告漏れについて、最近発覚した事例を3つ紹介する。


【事例1】仮想通貨取引の利益を隠蔽

 サラリーマンのAは複数の交換業者を通じて仮想通貨取引をしていたにもかかわらず、いずれの取引益も申告していなかった。しかし国税当局は、交換業者の任意の協力によって得た情報を基に、Aに多額の売買益があることを突き止めた。

 

 近年、仮想通貨は取引量の増大に伴って申告漏れが増加し、ここ数年で少なくとも50人と30社が総額100億円を申告していなかったとされる。当局は仮想通貨取引について「取引を行う納税者の特定や情報の収集が困難なケースも存在してきた」と振り返る。

 

 今後は取引への監視が強化される見通しだ。例えば来年1月には、国税当局が仮想通貨交換業者に対して申告漏れや脱税の疑いがある者の個人情報を法的に照会できる制度が始まる。当局はこれらの制度を活用し、「適正な課税の確保」に向けて取り組むとしている。

 

【事例2】〝ネット投げ銭〟の申告漏れ

 動画の配信で収入を得ていたBは、視聴者から受け取った換金可能なポイントの一部を税務署に申告していなかった。

 

 ユーチューバーなどの動画配信者の主な収入源は企業からの広告収入だが、いわゆる〝ネット投げ銭〞での稼ぎも大きいと言われる。ネット投げ銭とは、大道芸人やストリートミュージシャンにお金を払う「投げ銭」になぞらえた仕組みで、インターネットユーザーが気に入った動画配信者に任意でお金やポイントを送る行為を指す。

 

 Bの動画の視聴者は、動画配信システムを提供する事業者からポイントを購入し、Bにネット投げ銭を行った。Bは換金した分は税務署に申告したが、未換金の分は申告しなかった。たとえ換金前でも金銭と同等の価値があるものは収入として申告しなければならず、税務署に過少申告を指摘された。

 

【事例3】国外業者が消費税無申告

 スマートフォンなどのゲームのアプリを配信する外国の事業者C社は、日本に住む人にゲームを配信することで収入を得ていたにもかかわらず、日本に消費税を納めていなかった。C社は日本での売上ランキングが上位の事業者だった。

 

 2015年9月以前は、外国の事業者がゲーム配信をはじめとしたデジタルコンテンツの提供で日本のユーザーから対価を得ても、消費税を納める必要はなかった。

 

 しかし、デジタルコンテンツはどの地域からでも提供できるにもかかわらず、事業者の所在地で消費税の課税と不課税が分かれるのは不公平だとして、15年10月以降は国外事業者にも消費税が課税される仕組みに見直された。

(2019/07/31更新)