じゃぶじゃぶのコロナ融資

借り換え、借り増しのチャンス


 新型コロナウイルスの感染拡大で経営に打撃を受けた中小事業者の多くが、金融機関の特別融資を利用している。矢継ぎ早に打ち出された政府のコロナ対策が一通りの落ち着きを見せたこの段階で、「コロナ融資」の上手な使い方を知っておきたい。


 東京商工リサーチが7月下旬から8月中旬にかけて行ったアンケート調査によると、新型コロナウイルスに関連した国や自治体、金融機関の支援策を「利用した」と答えた企業は5901社で、回答した全企業の半数近くに上っている。また実際に利用した支援策を見ると、「民間金融機関の実質無利子・無担保融資(信用保証付き)」が2865社、「日本政策金融公庫の実質無利子・無担保融資(新型コロナ特別貸付)」が2265社と、持続化給付金や雇用調整助成金と並んで利用した企業が多い結果となった。

 

 国は今年の早い段階で新型コロナ対策の融資策を打ち出し、民間金融機関にも融資審査や返済スケジュールの面で柔軟な対応を求めるよう通知していたが、5月前半時点ではまだ混乱もあり、銀行によって対応もまちまちだった。国の方針に沿わない対応もそこかしこで見られたようだ。その後も、後出しで追加の支援策が出されたこともあり、混乱は続いていたが、ここにきてようやくコロナ融資を巡る対応も落ち着いてきた。

 

 そこで、今後コロナ融資を利用する際に押さえておきたい4つのポイントを紹介する。

 

メインバンクに配慮

 まず、コロナ融資に限った話でもないが、新たに融資を打診する際には、自社のメインバンク、サブバンク、政府系金融機関(日本政策金融公庫や商工中金など)の順にするのが鉄則だ。一般的に政府系金融機関のほうが民間金融機関と比べて審査が通りやすいため、最初からそちらを使いたいと考えてしまうのも理解できるが、借りやすい政府系機関は「切り札」として最後まで残しておきたい。

 

 コロナ融資は無利子もしくは低金利のため、新たに借り入れた資金で既存の借入金の返済をする「借り換え」によって、トータルの返済額を減らせる可能性が高い。債務をコロナ融資に一本化すれば月々の返済額が10万円減ることも珍しくなく、借金の負担を減らすチャンスといえるだろう。

 

 金融機関の中にはコロナ融資の認定申請代行をセールストークに取り入れ、積極的に推進しているところもある。信用保証協会が保証を提供してくれるコロナ融資は銀行にとっても回収しやすいため、これを機に融資額をどっと増やして自行の存在感を高めようという狙いだ。条件がよければ検討の価値があるが、その際にはメインバンクにその旨を伝えるようにしたほうがよい。メインバンクの保証付き融資の既存借入金をサブバンクの新規融資に借り換えると、メインバンクとの信頼関係が揺らぎ、取引解消となってしまう恐れも否定できない。ただでさえ金融機関の合併によって銀行の数が減っている中で、取引銀行がひとつ減るということは事業者にとって大きな痛手となってしまう可能性があるからだ。

 

 民間、政府系にかかわらず、コロナ融資は元本分の返済が猶予される「据置期間」を、最長5年としている。コロナ融資がスタートしたばかりの時期は、それでも据置期間1年で契約されることが多かったようだが、政府が「5年」を強調したこともあり、多くの銀行が5年で貸し出すようになった。

 

 返済期間が同じでも、据置期間が長い融資は期間終了後の負担が重くなる。元本分を短い期間で返済しなければいけないからだ。ただ今回のコロナ融資では、元本の返済期間そのものが長期化傾向にある。例えば日本政策金融公庫や商工中金では運転資金15年、民間金融機関では10年が上限と設定されている。そのため据置期間を長くとっても、終了後の返済負担がそれほど大きくならない状況といえる。

 

コロナ禍で2回目の利用も

 5月にスタートしたコロナ融資は、6月に融資額や借り換え限度額が拡充された。例えば日本政策金融公庫の融資上限は6千万円から8千万円に引き上げられている。

 

 ただし、拡充によって調達できる金額が自動的に増えるとは言えない点に注意したい。コロナ禍で融資判断がいつもより甘くなっているとはいえ、融資審査機関は原則として、必要運転資金の額や固定支払額(家賃や光熱費など)を判断材料にして融資金額を決めるものだ。つまり融資額の上限が増えたからといって、たくさん借りられるようになるわけではないということだ。

 

 もちろん、もともとの上限で借りていた事業者は、再度の申し込みによって新たな上限の金額を借りることができる可能性が十分にある。運転資金に不安があるなら、2回目の融資申し込みをする意義はあるだろう。

(2020/09/30更新)