【需給バランス】(2017年6月号)


2015年度の国民医療費は前年度比3・8%増の41兆5千億円。毎年増大する一方の医療費を抑制するためとして、政府は2年に1回の診療報酬改定で診療単価や薬価を引き下げている。高齢化に伴って患者数が増えるので、診療単価を引き下げるという理屈だ▼パソコンや薄型テレビが登場した直後は、当然、販売価格は高額だった。モノの値段やサービスの対価は本来、需給のバランスで決まる。供給数が増えて普及が進めば、必然的にモノの値段は安くなる。ただし、これは一般耐久消費財や食料品などに当てはまる理屈。政府の理屈は、医療サービスと薄型テレビを同列に並べて論じたようなものだ▼患者が増える(需要増加)一方で、医師・看護師などの医療従事者が不足(供給不足)している現状では、むしろ「単価が上がる」のが自然なはず。政府の理屈は、これとは正反対のものだ▼この理屈で最も打撃を受けるのは首都圏の総合病院だといわれている。患者の少ない診療科を設置しなければならないし、人件費などのコストは地方よりも割高になるためだ▼マンパワーが不足している医療の現場に対して、診療単価を下げた分、たくさんの患者を診ろというのでは、サービス残業も医療ミスも減りはしないだろう。