【社会的な痛み】(2018年3月号)


抗がん剤による副作用だと考えられる脱毛。一般的に、投与してから2〜3週間後に髪の毛が抜け始め、治療終了後1〜6カ月経過するとまた髪の毛が生えはじめる。そして8カ月〜1年を経過したころにはほぼ回復するといわれている▼がん治療を続けながら働く人が増えている。闘病しながら日常生活を送っているのだから、薬の副作用による「外見の変化」が精神的に大きな苦痛となる場合もある▼医療の進歩により、がん患者の関心は「どれくらい生きるか」から「どのように生きるか」へと移った。社会生活を送るなかで直面する外見の変化という〝痛み〞は、社会的な痛みにほかならない。その多くは、自分の外見が同僚や取引先に「不快な思いをさせているのではないか」という不安からくるものだ▼がん保険を主力とするアフラックが、がん治療で頭髪が抜けた場合などに保険金を支払う「外見ケア特約」を4月から導入するという。治療が直接の原因だと診断された場合、10万円が給付される。特約保険料は男性30歳で月額20円、60歳で164円。女性30歳で32円、60歳で111円。ちなみにウィッグの購入費用は平均11・7万円だ▼働きながら治療を続ける人は32万5千人に上る。「外見のケア」のための環境整備も必要になってきたといえるだろう。