【痛税感】(2017年1月号)


大型間接税の議論が始まったころ、当時の中曽根康弘首相は「羊が鳴かないように毛をむしること、それが税の極意」と発言。あとで「強権的なやり方を避ける意味だった」などと釈明したが、納税者・国民を〝もの言わぬ家畜〞扱いにしたと大問題になった▼「新税はすべて悪税といわれるが、慣れてしまえばそれまでのこと、ともいわれる」。消費税導入の前年、こう語ったのは当時の竹下登首相。反対や反発があっても、実施さえしてしまえば、やがては慣れて定着する。自民党政権の歴代首相には、そんな思いがあったことだろう▼「痛がらせるな」「気づかせるな」「慣れさせろ」。どれも当時は国民から大反発を食らったものだが、最近はどうだろうか。〝改革〞には「痛みが伴うものだ」とした当時の小泉純一郎首相は、それに「耐えろ」といった。民主党政権は「政治家も役人も身を切る」などと語るだけで、実行には移さなかった。そればかりか、「議論すらしない」としていた消費増税を決めた▼医業経営者にとって消費税は、支払うばかりで受け取ることのない完全な〝損税〞だ。この痛みに耐えることに慣れ過ぎて「鳴かない羊」になってしまってはいけない。患者の痛みだけではなく自らの痛税感を取り除くためにも、医師は声を上げていくべきだ。