【必置機関】(2021年2月号)


調理師免許の交付手続き、社会福祉施設への栄養指導、プールや井戸の水質検査、理美容院・旅館・公衆浴場への営業許可と監視指導、ペットショップの登録、狂犬病予防接種についての獣医師からの届出受理、母子健康手帳の交付——。保健所が担っている業務のごく一部を並べてみたが、その守備範囲の広さにあらためて驚く▼保健所は、地域保健法に基づいて自治体による設置が義務付けられている「必置機関」だ。しかし近年では、行政の効率化や人員の〝合理化〟を目的として福祉事務所などと統合され「保健福祉事務所」「福祉保健所」「保健福祉センター」「健康福祉センター」といった名称になっているケースも多い。ちなみに東京23区ではそれぞれの区に保健所が設置されているが、大阪市には1カ所しかない。行政のムダを省くということで大幅に削減された結果だ▼当然、この流れは周辺の自治体にも波及。兵庫や京都でも保健所が次々になくなっていった。その2府1県が足並みを揃えて政府に緊急事態宣言の発出を要請したわけだ。1989年には全国に848の保健所があったが、2020年には469にまで削減されている▼コロナ禍での確定申告がスタートする。なにが本当に「税金の無駄遣い」なのか、よく考えてみる機会としたい。