【医者の無関心】(2015年5月号)


「お医者さんは税金が安い」などという間違った意見をよく耳にする。世間では「社会保険診療報酬の所得計算の特例措置」や「事業税の非課税」といったことを指して〝医師優遇税制〟だと認識しているようだ▼「社会保険診療報酬が年間2500万円以下なら、72%が概算経費(みなし経費)として認められている。一般の事業者よりもはるかに優遇されていて不公平だ」ということらしい。まったく、冗談ではない▼この理屈をそのままあてはめるとしたら、住宅ローン控除の対象者も、エコ・カー減税を利用して新車を購入したひとも、「優遇されていてズルイ」ということになる▼そもそも、医業の概算経費率を定めた「所得計算の特例措置」によって、すべてのお医者さんが「経費を過大に認められている」わけではないのだ。使ってもいないお金をコストとして認めてもらえれば、たしかに課税所得は少なくなり税金も安くなるはず▼だが、現実には、概算経費率で定められた割合よりも多く、医業の現場ではコストが発生している。「計算が簡単だから」というだけの理由で〝医師優遇税制〟を使っている医師のなかには、本来かかったコストよりも少ない経費率で申告し、税金を納め過ぎてしまっているケースもある▼消費税の〝損税〟問題と併せて、ドクターはもっと税に関心を持つべきだ。