【医療費破産】(2020年11月号)


ペイシェントプロテクション・アンド・アフォーダブルケア法は、2010年に大統領署名されたアメリカ合衆国の連邦法。通称「オバマケア」。これにより16年までに無保険者の割合は半減し、医療費全体の増加率は鈍化した▼良いことづくめの法律のように思えるが、米国内の世論調査では当初、大多数がこのオバマケアに反対していた。ようやく多数派の支持を得たのは17年のことだ▼アメリカの医療現場では自由診療が基本。骨折手術で1日入院したら1万5千ドル、貧血で2日入院したら2万ドル、手術なしの自然気胸の治療で6日入院したら8万ドルもの請求がなされたケースもあるという。こうした支払いに備えて、国民各自が民間の保険会社と契約するのだが、慢性疾病のある患者は保険更新を拒否されることもあった▼アメリカの自己破産者の6割は医療費が原因で、さらにその8割は医療保険に入っていたとされる。高額な医療費と、それをカバーしきれない民間の保険。オバマケアはこうした問題の解消をめざしてスタートした▼大統領選は11月3日。その結果がどうであれ、トランプ氏は任期中。堂々たる現職の合衆国大統領だ。選挙から1週間後の10日には彼の指名した判事も加わる連邦最高裁で、オバマケアの無効化をめぐる口頭弁論が開かれる。