【不都合な真実】(2015年1月号)


年末の総選挙では、各党の候補者が街頭で「景気を回復させる」「地方を活性化する」「行政の無駄を省く」などと訴えていた▼与野党がアベノミクスの評価に多くの時間を割いたことも、今回の選挙戦の特徴だ。憲法や安保、原発問題なども取り上げられたが、その一方で有権者の多くが高い関心を寄せていた医療・介護・年金などの「社会保障」を重点政策として掲げる政党はほとんどなく、候補者個々の演説でもそのウエートは低かった▼迎えた新年は、社会保障制度の「2015年問題」が本格的にスタートする年だといわれている。昭和22~24(1947~1949)年に生まれた、いわゆる「団塊の世代」のすべてのひとが満年齢で65歳以上となり、老齢基礎年金の受給権が発生するためだ▼この世代の現存する人口は約660万人。さらに昭和26(1951)年までの5年間に生まれたひとを合計すると約1060万人となり、2015年以降は医療保険制度上の「前期高齢者」の数がピークを迎えることになる▼こうした「不都合な真実」が選挙戦でも隠されたまま、消費税の再増税が先送りされるわけだ。2016年の診療報酬改定に悪影響を及ぼす可能性は否定できない▼新年早々「鬼が笑う」かもしれないが、この1年は来年の診療報酬改定の行方に注目していきたい。