【なんのために】(2019年10月号)


健康保険組合連合会が、企業の社員とその家族らが加入する1391の組合の決算見込みを発表した。給与から天引きされる保険料率は平均9・21%で過去最高を更新。国から補助を受ける「協会けんぽ」の平均保険料率は10%だが、これを上回る保険料率となっている組合は312を数える▼短時間労働者への社会保険適用拡大によって被保険者数は伸びており、保険料収入を押し上げている。一方、支出はほぼ横ばいで、高齢者医療などへの拠出金も減っている▼収入が増え、支出が減る。医療費の削減に向けて、とても良い傾向のように思えるが、少子高齢化の進展速度を考えると、この程度のことではまったく安心できないという。そのため健保連では国に対して高齢者の窓口負担を引き上げるよう求めている。足りなくなると、その分を補うために多く負担させる。国も健保連も考えることは同じだ▼患者に負担を強いる前に、本気で取り組むべきことがあるはずだ。たとえば重複処方の解消。ひとりの患者が複数の医療機関を受診し、それぞれの病院から血圧を下げる薬と上げる薬を処方されているケースなどざらにある▼「かかりつけ医」「かかりつけ薬局」「おくすり手帳」、そしてマイナンバーは、いったいなんのためにあるのだろうか。