【そもそも】(2019年11月号)


消費税増税により国の一般会計税収は過去最大の62・5兆円となる見通しだ。一方、社会保障費や防衛費の増加で一般会計予算は101・5兆円に膨れ上がる。高齢化に伴う社会保障費の増大に税収の伸びが追い付かず財政再建への道筋は見えないままだ▼政府は基礎的財政収支(PB)を2025年度に黒字化させる目標を掲げる。しかし、内閣府の試算では消費税増税による歳入増を見込んだ上で、名目3%以上の高い経済成長を想定しても25年度のPBは赤字だ▼そもそも消費税増税は、財政健全化がその大きな目的ではなかったのか。増収分をめぐっては、12年に当時の野田佳彦内閣のもとで民主、自民、公明の3党が使途について合意。社会保障の充実に回す1・1兆円以外は国の新たな借金の抑制に充てると定めていたはずだ▼にもかかわらず、政府は教育無償化やキャッシュレス還元などのバラマキ政策を推し進める。使途が拡大すれば財政の健全化が遠のくのは当たり前のことだ▼政府は「全世代型社会保障検討会議」を立ち上げた。年金、医療、介護などの制度改革を財政の視点でも議論するという。歳出削減には「痛み」が伴う。その痛みを直接感じるのは患者とその家族だ。バラマキの一方で社会保障費が削られるのは納得しがたい。