【お役所仕事】(2016年3月号)


お役所仕事ほどナンセンスなものはないと、あらためて実感するニュースだ。全国初の移動型緊急手術室機能を備えた八戸市市民病院の「新型ドクターカー」の運用開始に、行政が待ったをかけた。「移動手術室」というネーミングに対して、青森県が「手術室ならば施設の一部ではないか」と指摘。しかし、医療法上の手続きが必要かどうか県の結論は出ておらず、病院側としては早期の判断を求めているという▼「V3」の愛称を持つ新型ドクターカーは、心筋梗塞の治療に対応できる医療機器を搭載したもの。駆けつけた先で手術ができる機能を備え、ドクターヘリが飛べない場合には市内だけではなく、遠隔地にも出動するという▼県が待ったをかけた理由は「報道で車両が移動手術室と呼ばれているのを知ったから」。病院側では昨年10月からの運用開始を予定していたが、それが延び延びになっている▼ドクターカーは通常、緊急車両として警察に届け出れば使用できる。だが、仮に「施設」と判断された場合には感染予防のための空調管理システムなどが必要になる▼救急救命は一秒を争う「命の現場」。そもそもドクターカーの運用は医師の判断事項だ。「移動手術室」がダメだというのなら「手術台付ドクターカー」でよかろう。患者は、どちらでも構わないのだから。