【群雄割拠】(2015年8月号)


1990年代以降のビジネス・実用・教養ジャンルでのベストセラーを数点挙げてみたい。野口悠紀雄著『「超」整理法』(中央公論)、永六輔著『大往生』(岩波書店)、泉谷閑示著『「普通がいい」という病』(講談社)。共通しているのはどれも〝新書〟で刊行されたタイトルだということ▼新書判とは、概ね縦173ミリ、横105ミリの判型の書籍を指す。上製(ハードカバー)の単行本に比べて印刷・製本コストを低く抑えることができるため、その分、価格も安くなるのが一般的で、コンパクトサイズだから読者も手に取りやすい。「文芸作品は文庫で、ノンフィクションは新書で読む」という読者が多いのもうなずける▼新書の歴史は1938年創刊の岩波新書にはじまる。これに中公新書と講談社現代新書を加えた3シリーズが、いわゆる「新書御三家」と呼ばれるそうだ。冒頭の3タイトルは「御三家」に収載されている作品ということになる▼赤瀬川原平著『老人力』(筑摩書房)、養老孟司著『バカの壁』(新潮社)、山田真哉著『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』(光文社)、坂東眞理子著『女性の品格』(PHP研究所)なども新書での書き下ろし作品▼群雄割拠の新書市場に新レーベル「エヌピー新書」が参入する。創刊は9月1日。記念すべき第一作目は志賀櫻著『タックス・オブザーバー』だ。