【慣れてしまってはいけない】(2015年12月号)


「漢字の日」は日本漢字能力検定協会が制定した記念日。「いい字一字」の語呂合わせから12月12日になったという。毎年、その年の世相を象徴する「今年を表現する漢字(今年の漢字)」を全国から募集し、この日に京都の清水寺で発表する▼師走の風物詩のひとつともいえる「今年の漢字」。スタートした平成7年は阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件、金融機関の相次ぐ倒産などによる社会不安の拡大を反映して「震」の漢字が選ばれた▼昨年選ばれた漢字が「税」だったことを、どれだけのひとが記憶しているだろうか。17年ぶりの消費税増税が生活を直撃。国民の痛みを率直に表現した結果だと思ったが、わずか1年で痛税感を忘れてしまってはいないだろうか▼痛みに慣れて、感覚が麻痺することが怖い。5%から8%、次は10%への税率引き上げが〝規定路線〟として予定されている。中小企業の経営にも大きな打撃を与える増税に、慣れてしまってはいけない▼さて、平成27年の「今年の漢字」はなにか。東芝の不正会計やマンションの杭打ちデータ偽装事件などを反映して「偽」の字が有力などと言われているが、もし選ばれれば食品表示偽装が表面化した平成19年以来2度目となる▼世相を象徴する漢字として「偽」が再び選ばれるかもしれないという異常さにも、慣れてしまわないようにしたい。