【予防安全】 (2019年4月号)


「1・29・300」。この数字がなにを示すものなのか分かった社長さんは、安全に対する意識が高いといえるだろう▼そう。「ハインリッヒの災害トライアングル定理」。「傷害四角錐」とも呼ばれるが、「ハインリッヒの法則」といったほうが馴染み深いだろう。運転免許を更新に行くと、交通安全講習でよく使われるアレだ▼1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、300件の異常が隠れているという法則。米国の損害保険会社で技術・調査部の副部長をしていたハーバート・ウィリアム・ハインリッヒが1929年に論文で発表した▼事故を未然に防止する「予防安全」のためには、「29」と「300」にこそ注目し、分析する必要がある。これに対し、事故が起きてしまった後で原因を分析することを「墓石安全」という。事故から得た反省や教訓を石に刻み、安全への誓いを新たにするのも大切だが、やはり予防安全に勝るものはない▼ある中小企業では数年前に「2」件あった〝事故〞の防止対策として、若手社員に公衆電話のかけ方を教えたという。商談に遅れて来た社員に理由を聞くと、途中で電車の事故があったという。携帯がバッテリー切れだったので公衆電話を探した。受話器を上げずに10円玉を入れたが落ちてくる。「故障していると思った」そうだ▼「予防安全」への道は険しい。