顧客を紹介してもらった謝礼

情報提供料なら損金算入可能


 業績拡大のためには新規顧客の開拓が重要といっても、ゼロから新たな取引先を獲得することは容易ではない。実際には既存顧客からの紹介や、あるいはプロの業者に頼んで客を見つけてもらうことも多いだろう。

 

 顧客を紹介してくれた人や業者に渡す「お礼」は税務上どのように扱うのか。国税の通達によれば、新規顧客の情報提供や仲介を業務として行う、例えば専門の顧客紹介業者のような相手であれば、その対価は「情報提供料」として損金に算入できるとしている。

 

 では、客に知人を紹介してもらうようなパターンではどうかと言うと、謝礼金としての性格が強くなるため、原則的には交際費に含まれる。交際費でも条件次第で損金に含められるとはいえ、できることなら情報提供料にしたいところだ。

 

 相手が個人であっても、顧客紹介に対する謝礼金を情報提供料にするためには、以下の3つの条件を満たさなくてはならない。①謝礼金があらかじめ締結された契約に基づくものであること、②謝礼を受けるための条件が契約で具体的に明らかにされていること、③謝礼金の額が対価として相当の金額であること――。これらの条件を全て満たした時のみ、個人への謝礼金も「情報提供料」として損金に含めることができる。

 

 つまり前もって「新しいお客さんを紹介してくれたら謝礼をこれだけ払いますよ」という条件を明らかにしておき、その額が過大でなければ損金に含められるわけだ。口頭の約束も無効ではないが、課税当局への説明のしやすさを考えれば、条件を記載したポスターやチラシなどの書面を残しておきたい。

 

 一方、客のほうが紹介先を連れてきて、「俺のおかげで契約につながったのだから、少しお礼をしてよ」と要求されて支払った金額は交際費となってしまう。もっともお礼を受け取る側にとって両者に違いはないので、紹介をありがたいと思ったなら気持ちよく謝礼金を出すべきだろう。

 

 会社としては損金算入に限度額が設けられている交際費ではなく、なんとしても全額損金算入が可能な情報提供料に持っていきたい。先んじて「知り合い紹介キャンペーン」などと打ち出すことで損金算入の条件を満たすことができるので、顧客拡大のためにぜひ活用したいところだ。(2018/05/11)