遺留分の侵害額請求

「金銭」で経営権の阻害防ぐ


 亡くなった人が遺言を作成していなければ、遺産をどう分配するかは相続人全員の遺産分割協議によって決めることになる。協議の成立には全員一致の合意が必要なため、相続人の中に1人でも異議を唱える人がいれば協議は成立しない。裁判所での調停などを経て決着したとしても、その後の家族関係はギクシャクしてしまうことだろう。

 

 しかし、遺言があっても思い通りの遺産分割になるとは限らない。父母や配偶者、子など一定範囲の法定相続人には「遺留分」が存在する。遺留分とは「最低限の遺産を取得できる権利」のことだ。

 

 民法では、遺言で相続割合を自由に決定することが認められているが、但し書きで「遺留分に関する規定に違反することができない」と規定している。また死亡時の相続財産だけではなく、特定の相続人へのまとまった額の生前贈与分も「特別受益」とされ、遺留分の基礎となる財産に加えられる。

 

 なお、2019年の民法改正により、遺留分の行使は「減殺請求(現物対象)」から「侵害額請求(金銭の請求)」となった。これにより自社株の共有による経営権の阻害が起きないようになっている。また遺留分侵害額に相当する金銭をすぐに準備することができない場合は、裁判所に対して支払期限の猶予を求めることができるようになった。また、遺留分侵害額の算定の基礎となる「特別受益」が相続開始前10年以内の贈与に限られるようになった。(2021/03/24)