財産評価基本通達

法律ではないが有効な指針


 相続財産には現預金、有価証券、不動産、家財、乗り物など様々なものがあるが、それらは一体どういうルールに従って財産としての「価値」が決められているのだろうか。

 

 相続税や贈与税を計算する際、その財産にどれだけの価値があるのかを算出するための基準がある。国税庁の定める「財産評価基本通達」がそれだ。相続財産の評価のほか、同族会社のグループ内での株式移動や再編時の評価にも利用される。

 

 原則として財産評価は時価で行われるが、遺産のなかには時価を算定しづらいものもあり、通達はそれらを種類ごとに細かく分けて、評価のルールを定めている。

 

 例えば不動産の場合、土地・建物だけではなく樹木の評価ルールも存在する。果物の樹木では、幼齢樹なら植樹からの苗木代、肥料代、薬剤費代などの合計額の7割、成熟樹なら合計額から償却費を控除した7割と決まっている。

 

 動産ではさらに細かく、商品、家畜、書画骨とう品、乗り物といった現物が存在するものから、特許権、著作権、信託受益権といった各種の権利まで、あらゆる財産について個別の評価ルールが設けられている。

 

 この通達は、税法上で定められた「法律」ではなく、また法律の細則に位置付けられる「政令」や「施行令」でもない。あくまで国税庁長官が、国税職員や税務署員の現場での取り扱いを助けるための指針として定めたものだが、実際には法律と同様の拘束力を持ち、裁判でも同様に扱われることが多い。このため、租税法律主義の原則から考えると問題があると指摘する税理士も数多く存在する。(2021/03/08)