経営者の債務負担軽減

ガイドライン活用し事業整理


 中小企業庁が策定している「経営者保証に関するガイドライン」は、主に中小企業が銀行からお金を借りる際に経営者の個人保証を外すための指針を定めたものだが、もう一つの役割が、中小企業がやむなく事業を畳む際に経営者個人を過度な負債から守るというというものだ。

 

 例えば建設業を営むある企業は、事業の継続が困難な状況となっていたものの、社長夫婦が多額の個人保証をしていたため、事業の整理を決断できずにいた。そこでガイドラインを適用して早期の債務整理に着手した結果、夫婦の手元には自家用車や当面の生計費が残り、ほかの保証債務はすべて免除されることとなった。

 

 レストランを運営する会社は、他社に一部事業を譲り渡し、残りの事業を清算する際にガイドラインを適用した。保証人となっていた社長は保険解約返戻金や有価証券など大半を債務の弁済に充てたものの、ガイドラインを使って金融機関と話し合った結果、現預金300万円を生計費として手元に残すことができた。

 

 債権者である金融機関にとってもガイドラインの適用に応じるメリットがある。レストラン運営会社のケースでは、ガイドラインに沿って早期の債務整理を行った結果、回収見込額が1億円近く増加した。ズルズル判断を引き伸ばしてマイナスを拡大されるよりは、少しでもベターなタイミングで債務整理に踏み切ってくれたほうが、債権者としてもありがたいわけだ。

 

 コロナ禍で苦しい決断をせざるを得ないとしても、取引先や従業員、そして何よりも経営者本人や家族の今後の再スタートのために、ガイドラインをフル活用して、できる限りのことはしたい。(2021/03/10)