節税目的の海外移住は慎重に

厳しさ増す資産フライト


 日本から海外への移住をめぐる税金のルールは、ここ数年で急速に厳しくなっている。2017年4月には、親・子ともに5年超国外に住んでいれば日本の相続税が課されないという従来のルールが、2倍の10年超に引き上げられた。

 

 さらに、15年7月に導入された国外転出時課税では、有価証券など1億円以上の金融資産を持っている人が海外に住所を移して出国する際や、海外にいる親族などに財産を贈与・相続する際に、その段階で資産が売却されたとみなして含み益に譲渡所得税が課されるようになった。

 

 日本国内での税負担が重いからといって、資産を簡単に海外へ持ち出せるわけではないということだ。税金の問題だけではなく、住環境や気候、そして医療サービスが日本とは異なるため、健康リスクも解消できない。他にも目的があるならともかく、税金対策のためだけに海外で10年間暮らすのは困難を伴う。もしも海外移住を検討するなら、家族も含めたライフプランまでをしっかり考慮したいところだ。(2021/02/15)