税金滞納者に貸したお金

納税優先で回収できないことも


 Aさんは、BさんとCさんからそれぞれ100万円ずつ借金していているが、手もとにあるお金(財産)は100万円だけだったとする。BさんとCさんが貸したお金を回収するということになれば、通常は両者とも50万円ずつ受け取る権利を主張しそうなところだが、その一方(ここではCさんとする)が税務当局だと話が変わってくる。

 

 Aさんが税金を滞納していて、その額が100万円だったとする。そうなると、税金を徴収する税務署もしくは地方自治体は、国税徴収法8条に規定された「国税や地方税はすべての債権に先だって徴収する」というルールに基づき、優先的に100万円を回収することになる。つまり、100万円を貸していたBさんには一銭も入らない可能性があるのだ。

 

 そうなればBさんが実質的にAさんの滞納分を肩代わりしたことにほかならない。売掛金分の支払いが長期にわたって滞っている取引先が税金を滞納しそうだと感じたら、税務当局に全額を取られる前に、借金の早期回収を検討するべきかもしれない。

 

 ただし、取引条件や返済条件を変えれば取引先の経営が改善し、最終的に債権を全額回収できることもある。債権回収を急ぐという選択肢がベストとは限らない。取引先から支払いが滞っている原因を聞き、お互いにとってベストな道を探るようにしたい。(2018/02/08)