相続税調査で狙われる2つの「名義」

自社株は要注意


 相続税の税務調査は、その8割でなんらかの非違を指摘され、処分を受けてしまう厳しいものだ。調査対象となる財産は多岐にわたるが、特に重点的に調べられる2つの「名義資産」に気を付けたい。

 

 ひとつ目は「名義預金」だ。たとえ預金口座の名義人が相続人であっても、実質的な口座の所有者が亡くなった被相続人だと判断されると、預金が相続税の課税対象になってしまう。

 

 名義預金かどうかを判定する際にポイントとなるのが、誰が実質的に口座を管理していたかという点で、印鑑や通帳をどう保管し、使用していたかがチェックされる。また預金のお金の出元も、実質的な所有者を判定する際の重要な要素となる。

 

 ふたつ目は「名義株」だ。名義株とは、株式の名義上の所有者が誰であれ、実質的な所有者が他にいるのであれば、真の所有者は後者であるとみなされる株式のことだ。名義株かどうかは、株式取得資金の出資者、名義人と引受人の関係、取得後の配当金の帰属状況などから判断される。

 

 今年4月には戸建て住宅販売大手の創業者の相続に絡み、80億円以上の自社株が名義株と判断された。追徴課税は40億円にも上ったという。名義株の怖いところは、一見しただけでは問題があるように思えず、顧問税理士も見過ごしてしまいやすい点だ。相続が発生する前に自社株の状況をチェックし、疑わしいものがあれば名義変更などの対策を講じておかなければならない。(2018/08/30)