暴力団もPTAと同じ扱い?

異例の脱税裁判に注目


 マフィアの大親分アル・カポネが、多くの殺人や麻薬の密売、密造酒の製造などの犯罪に手を染めていながら、最終的には「脱税」の罪で起訴・収監されたように、暴力団と脱税は切っても切れない関係のように思える。

 

 しかし実際には、暴力団を脱税の罪に問うのは至難の業だ。暴力団は覚醒剤などの違法収益や、商店主から巻き上げたみかじめ料などをいったん配下組織が集め、それらの金がトップまで上納される仕組みを作っている。

 

 「上納金システム」とも呼ばれるもので、トップに集められる上納金は巨額なものになる。この上納金について、暴力団が仮に会社だとしたら、法人税を課せられるだろう。会社でなくても、収益事業が課税対象となる「人格のない社団等」であれば法人税を納めなければならない。

 

 だが、暴力団は、そのどちらでもない。つまり町内会やPTAなどと同じ扱いということになる。ここに裏社会特有の資金の流れの不透明さが重なった結果、暴力団の上納金は長年、国税にとっても簡単に手を出せない〝アンタッチャブル〞となってきた。

 

 しかし現在、福岡県に本拠地を置く特定危険指定暴力団「工藤会」のトップが脱税容疑で法廷に立たされている。今回、工藤会を起訴まで持ち込むことができたのは、資金管理担当だった組幹部が作成したメモを福岡県警が押収したことで、トップが上納金を私的に流用していた証拠になると判断したからだという。被告は容疑を全面否認しているが、極めて画期的な暴力団トップの脱税裁判、その結末に全国が注目している。(2018/02/02)