取り壊す前提で購入した建物

不動産取得税はどうなる?


 取り壊すことを前提に住宅を購入すると、一定の条件を満たすことで不動産取得税が課税されない可能性がある。ただし、この〝一定の条件〞というのが曲者だ。

 

 かつて以下のような裁判事例があった。競売で古い家屋の付いた土地を仕入れたA社は、その家屋の建ぺい率や容積率が法令の定めを大幅に超える違法物件だったため、商品化しないことを決め、多額の費用を負担して取り壊した。不動産取得税は取り壊すことを織り込み済みで住宅を購入すると、一定の条件の元では課税されない。

 

 具体的には地方税法で、「取り壊すことを条件として家屋を取得し、取得後使用することなく、ただちに取り壊わすと、不動産取得税の課税対象とならない」としている。この場合の条件とは、①取得時に取り壊し以外の選択肢がないことが客観的に明示されていること、②取得後直ちに取り壊されていること――の2つだ。

 

 ところが都税当局は、家屋に不動産取得税を課税した。A社はこれが気に入らず、不服を申し立てた。事件の審査をした東京都は、「取得が競売の場合には契約などで取壊し条件を示すことができていないため、賦課は適法である」と判断した。A社のケースでは、不動産購入時に取り壊して売却する意思があることを証明できなかったことが、一定の条件を満たさないと判断されたのだ。

 

 このほか、借家人が取得者の意思に反して居座わり続けるような場合は取り壊しが遅れてしまうことも想定されるが、取得後使用する意思がなければ、課税対象外となる。もっとも借家人との合意で遅延したり、取り壊すまでの期間の家賃を収受したりしていれば、課税対象になる。さらに、取り壊しの時期については、事例ごとに判断することとされているので注意したい。(2017/10/31)