出張費用の非課税ライン

「通常必要」ならOK


 出張にかこつけて空き時間に観光などをすれば、その費用は「出張費」には含められず、会社の損金にもできない。さらに業務上必要として支出したものであっても、その内容や金額次第では、出張した人への給与とみなされて課税されてしまうことがあるので気を付けたい。

 

 所得税法では、出張に必要だとして支給される費用のうち、業務に「通常必要」と認められるものについては、給与課税されないことになっている。出張以外にも、転勤に伴う引っ越しのための移動なら、社員本人だけでなく家族の旅費も非課税だ。「通常必要」とは、「同業種、同規模の他の会社の使用人などに一般に支給されている金額に照らして相当と認められるもの」と定められている。

 

 算定の際には、役員と従業員の間で適正なバランスが保たれていることが求められるが、差をつけてはいけないわけではない。産労総合研究所が2年ごとに行っている調査によれば、国内への宿泊出張の平均的な日当は、社長なら4799円、部長クラスなら2809円、一般社員なら2222円となっている。また宿泊費では、社長1万4242円、部長クラス9870円、一般社員8723円が平均値だ。

 

 むろん業種や会社の規模によって平均は変わってくるだろうが、トータルすると社長の国内出張は1日約2万円というのが〝相場〞と言えるだろう。もちろん実費としてそれ以上かかっても、業務上必要なものであると説明できるなら非課税で処理して問題ない。出張費についての社内規定を置いていなくても、それが理由で否認されることはない。

 

 ちなみに東京都の舛添要一前都知事が辞任に追い込まれたきっかけの一つが、ロンドン・パリへの豪華出張だった。舛添氏は都市間の関係強化を目的として、職員ら20人を引き連れて5泊7日の出張に赴き、その費用は約5000万円に上ったという。(2019/06/17)