ペットが税務署に奪われる?

差し押さえの対象となる〝財産〟に


 税金を滞納すると、税務署から督促状などが届く。督促に応えず、また延納なり分納なりでも納めていく意思を示さないと、当局は最終的に「差し押さえ」という手段に出ることとなる。

 

 税務署や自治体による差し押さえは非常に厳しいものだが、それでも法律上、最低限これだけは差し押さえてはいけないという財産が存在する。国税徴収法の75~78条では「差押禁止財産」を定めていて、生活に欠くことのできない衣服などの必需品、食料や燃料、業務に欠かせない最低限の設備、一定以上の給与や年金などが列挙されている。

 

 そのほか実印、位牌、日記、学習用具なども禁止財産に当たり、主に生活の維持に欠かせないものと、最低限の権利とみられるものが対象となっている。

 

 数年前、ドイツの税務当局が血統書付きのペットを押収してインターネットで売るという事案が発生した。ある家庭が市税を滞納した結果、市職員と裁判所の職員が自宅を訪れて差し押さえる財産を物色し、一家が家族同然にかわいがっていた〝愛犬〟に目をつけたのだという。1歳になる犬は血統書付きで、ペットショップで買うと19万~25万円が相場だった。

 

 インターネットオークションの結果、相場の半値の約10万円の値が付き実際に引き渡された。動物愛護団体などから寄せられた批判に対して当局は「合法である」とのみコメントしたそうだ。

 

 日本の国税徴収法でも、差押禁止財産にペットは含まれていない。つまり法律上では、日本でもペットを差し押さえることが違法ではない。とはいえ実際にペットが差し押さえられるというケースはほとんどないようだ。

 

 給与は差し押さえ禁止財産に含まれているが、銀行に振り込まれた時点で「給与ではなくなった」として差し押さえるケースも発生している。法律上で認められている以上は、愛するペットが差し押さえられ、転売される可能性すらゼロとは言えない。(2021/02/22)