遺産分割協議が長期化

分割見込書の提出で期限を3年延長


 亡くなった人が住んでいた宅地の面積が一定以下などの要件を満たせば、相続税評価額を最大80%減額する「小規模宅地の特例」を適用できる。この特例を利用するには相続税の申告期限までに遺産が分割済みであることが必要だが、協議が「争族」化してしまう可能性を考慮して、分割見込み書を申告書に添付することで3年の期限延長が可能だ。

 

 その3年でも協議が終わらない場合、「遺産分割ができないやむを得ない事情」があるときに限ってさらに期限を引き伸ばすことができるが、単に分割協議がまとまらないだけでは、この「やむを得ない事情」には該当しない。

 

 実際にあった事例では、ある相続で遺産に不動産が多く範囲確定に時間がかかってしまい、3年の延長を申請して協議を続行した。ところが選任した弁護士が忙しく、なかなか協議の機会を設けられない。結局その弁護士は病気が原因で降板し、別の弁護士に代えたが、それでも分割協議は進まなかった。うまく分割できない不動産部分については、現金などで立て替える「代償分割」を利用することで合意に至ったものの、今度はその代償金の額で争いになった。さらに一部の賃貸不動産について改修工事の費用をどう精算するかなど、遺産分割に直接関係ない部分でも結論が得られず、3年間で14回に及ぶ協議を行っても結論が出ることはなかったという。相続人らはこれらの経緯を「やむを得ない事情」として期限延長を税務署に申請したが、却下された。

 

 このケースは国税不服審判所にまで持ち込まれたが、結局、「相続人のなかに納得しなかった者がいただけ」として、やむを得ない事情に当てはまらないとされた。審判所によれば、やむを得ない事情というのは、遺産の範囲や遺言の効力についての争いがあり法的な解決手段がとられている場合や、遺産分割が法的に不可能である場合などだという。(2019/02/15)