遺産分割協議がまとまらない

仮申告で加算税回避


 相続人がそれぞれの主張を譲らず、遺産分割協議が難航することがある。話し合いがまとまらなくても相続税の申告期限はやってくる。被相続人が亡くなった日から10カ月以内に申告しなければ、相続税額の15%の無申告加算税が余計にかかってしまう(相続税の額が50万円を超えると税率20%)。

 

 協議が長期化すると、話し合いに参加していた相続人が死亡することも起こり得る。そうなると相続権が別の人に移ってしまい、話し合いは一層こじれることになりかねない。

 

 申告期間内に間に合わなければ、法定相続分どおりの割合で遺産を取得したとして税額を計算し、申告を済ませておくようにしたい。その上で遺産分割協議が成立した後に、実際に受け取ることとなった財産を基に税額を調整すればいい。

 

 話し合いの結果、法定相続分より受け取る財産が減った人は、その分だけ相続税額も減額できるので、「更正の請求」という手続きで税金の還付を受ける。反対に受け取る財産が増えた人は「修正申告」で税額を訂正し、追加で納税することとなる。

 

 また期限内に申告しておかないと、加算税が課税されるだけでなく、小規模宅地の特例や配偶者の税額軽減といった特例を受けることができないことも理解しておきたい。協議がどうしてもまとまらなければ、申告後3年以内に分割協議が終了する見込みであるという意思表示を税務署にしておけば、分割協議後に特例を適用することができる。

 

 なお、遺産分割協議が終わって税務申告を済ませた後に、相続人同士の話し合いの結果、改めて遺産分割協議をやり直すことも考えられる。それによって財産が移動することになった場合は、相続税の申告をやり直すのではなく、譲渡や贈与として改めて申告することになり、税負担が増えることになる。(2019/10/23)