連年贈与とみなされないために

公証役場を活用


 毎年110万円までの贈与には贈与税がかからないことはよく知られている。ただし、総額1100万円を贈与するために10年かけて贈与していると、税務署は「連年贈与」と判断して贈与税を課税することがあるので注意したい。

 

 「連年贈与」とは税法上で定義されたものではなく、税務職員や税理士など、いわゆる税界での通称で、ひとつの贈与が何年かに分割されたものを指す。暦年課税方式では、贈与税は1人が1月1日から12 月31日までに受けた財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかる。つまり110万円までは非課税という理屈だ。

 

 仮に子どもが2人として、年間110万円ずつ30年間にわたって贈与すれば、110万円×2人×30年=6600万円となり、それぞれの子どもに3300万円ずつを税負担なく贈与することが可能になる。

 

 だが、毎年110万円を30年間ではなく3300万円を30分割して年に110万円ずつ受けていたとなると、3300万円を受け取る権利を最初の時点で取得していたとして課税されることになる。結果として同じ金額になったとしても、贈与するつもりの3300万円をわざわざ分割しているのは課税逃れの意思があると判断される。

 

 連年贈与とみなされないためには、贈与のたびに贈与契約書を作成しておくのが有効だ。ただ、疑り深い税務職員であれば、税務調査の前に慌てて数年分の契約書を作成したのではないかと追及してくることもある。そうした事態を避けるには贈与のたびに公証役場で契約書に日付を入れてもらうことができれば鉄壁だろう。(2020/02/21)